話し合いに応じたアガーテは王の間にて話をするように告げて、ヴェイグ達を王の間へと連れ込んだ。
王の間にある玉座に凛と座るアガーテ。その隣に寄り添うジルバ。
ヴェイグ達は玉座から軽く段差になった下段で若干アガーテを見上げる形で向かい合っていた。
そしてその両者の間、アガーテ寄りの位置に立つサレ。
彼に肩を抱かれて動けないは仕方なくその隣についている事となった。
ユージーンが一歩前に進み出て、アガーテに一礼する。
「陛下に置かれてはお変わりも無く、お喜び申し上げます」
「ユージーン。貴方は人を殺め、一度は城を追われた身。陛下に直訴するなど、なんと恐れ多い・・・!」
ジルバの言葉の途中、前に出ていたユージーンよりも前にヴェイグが身を乗り出した。
「俺達は・・・!」
「わかっている。だから俺に任せてくれ。頼む」
ユージーンに止められたヴェイグは渋々といった感じに後ろへ下がる。
彼の必死な様子を見て、サレは愉しそうにククッと喉を鳴らした。
「・・・ユージーン。貴方は私の真意を聞かせて欲しいと言いましたね?」
「はい。単刀直入に申し上げます。陛下はヒューマの娘を集めて、何をなさるおつもりなのですか?」
アガーテは一度、スッと彼から目を離す。
はぐらかしは許さぬとばかりにユージーンが続けて声を上げた。
「陛下!」
「・・・こんな言い伝えがあります」
遠い目をして、話し出した。
「古の戦に聖なる王は朽ちて、暗黒の月をこの地に放ちたり。されど、かの月に赤き光が満ちし時、王は再び姿を現さん」
「聖なる王・・・」
はふと呟いた。
バルカに渡ってから、何故か自分の周りに聖なる王の事を聞くからだ。
私はただの奴隷人形と呼ばれる・・・ホーリィ・ドールという名の種族というだけではないのか・・・?
考え込むに気づいたハープが安心させるようにそっと足元に擦り寄った事で、彼女は我に返る。
幸い、隣にいるサレにその様子が気づかれる事は無かった。
アガーテは軽く息をつくと続きをしゃべった。
「その昔、不思議な力を持つ聖なる王と同じ力を持つ聖者達がこの地を治めていました。
ある時、王と六人の聖者達は理想の違いから対立し、やがてそれは世界を巻き込んでの大きな戦いへと発展しました。
どちらにも国の行く末を案じ、理想の社会を作ろうとしての対立。・・・そこには善も悪もありませんでした」
・・・大きな戦い・・・ホーリィ・ドールは・・・それで滅んだのか・・・?
「果てしなく続いた戦いの末、六人の聖者は聖なる王を倒し、この地に封印したのです。
私はその封印を解き、聖なる王を蘇らせる儀式を執り行うのです。
・・・・・・・・・今こそ、その力がこの国にも、私にも必要なのです」
ぎゅっと強くアガーテは両手を膝の上で握った。
「我が父、先王ラドラスが引き起こした能力者の同時覚醒。バイラスの大量発生による混乱。・・・我が国は滅びの道を歩んでいます」
「滅びの道?そんなヤバイことが起こるって言うのかよ」
ティトレイが問うと、アガーテは静かに肯いた。
「ですから、そうなる前に手を打たなくてはなりません」
「聖なる王を復活させたとして、その力をどうやって操るのですか?」
今度はヒルダが訊ねた。
アガーテは両手を前に差し出した。
「・・・我が月のフォルスで」
彼女の手の中に、ふわりとフォルスキューブが現れる。
「王家に連なる者だけが持ちうる月のフォルスに聖なる王の力が合わされば、必ずカレギアを救う事が出来る。・・・私はそう信じています」
「俺が聞きたいのはそんな事じゃない!
アンタが命じてさらわせたヒューマの娘は・・・クレアはどこにいる!?」
ヴェイグは一番聞きたかった事をアガーテに問い詰める。
アガーテは彼を見て、静かに瞬きした。
「あぁ・・・そのことですか。クレア・・・そう。貴方はクレアのお友達なのですね」
「そうだ、クレアだ!儀式とクレアにどんな関係がある!?」
ヴェイグがもっともな意見を述べると、アガーテは目を閉じた。
「・・・・・・光・・・光の無い世界なら、良かったのに・・・」
「アガーテ様・・・?」
様子がおかしいと気にするを、肩を強く抱く事でサレは止めさせた。
「この世界は明る過ぎるのです。暗闇なんてどこにも無い。
この眩しい世界の中で生きる為に、彼女は無くてはならないのです。クレアは・・・私の希望・・・」
「何を言っているんだ・・・?」
ワケがわからないと呟くヴェイグに、アガーテは首を振る。
「・・・安心なさい。儀式が終わればすぐに彼女はお返しします。
何があろうとも、彼女が変わる事はありません。
・・・・・・何があろうとも、彼女は目を閉じる事が出来るから・・・」
「どういう意味だ!?クレアに何をするつもりだ!?」
ヴェイグが叫ぶと同時に、アガーテは黙って俯いた。
しかし、それはヴェイグに怯えたような様子ではない。
呆けるかのようにずっと遠くを眺めるような、憂いを帯びた瞳をしたアガーテはふっ、と息をついた。
「陛下!アガーテ様!?」
「何か・・・様子がおかしくないか?」
ユージーンとティトレイが異変に気づくが、どうしたのかがわからない。
「クレア・・・アレは私のモノ・・・・・・も、私のモノ・・・」
アガーテは立ち上がると、両手を上に掲げた。
それと同時にヴェイグ達に向かって白い光が爆発するように放たれた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ヴェイグ達 六人は突如現れた白い光に飲み込まれ、悲鳴を上げて倒れる。
一番前にいたヴェイグが一番ダメージを受けたようだ。
「ヴェイグっ!」
彼の元へ駆け寄ろうとしたをサレは妨げるように強く抱きしめた。
抱いていた肩に爪を食い込ませる。
「サレ様!?」
は肩越しにあるサレの顔を見た。
倒れているヴェイグ達を見てクスクス笑うサレは彼女の望み通りに目を合わせた。
「ダメだよ、。君はアイツらのモノじゃないんだからさ」
「私はもう貴方のモノでもないはずだっ!!」
そうだ。自分はサレに捨てられた。
もう彼に従う謂れは無い。
それを意味して言葉を放てば、片手でくい、と顎を掴み持ち上げられる。
「・・・誰にそんな口聞いてるのかなぁ?僕は君の『契約の首輪』を持つサレだよ?
今ここでアイツらを殺すように命令しても良いんだけど・・・・・・どうする?」
シャラっと話題の物を服の内から取り出され、目の前に見せつけられる。
契約の首輪・・・・・・
それを所有する主人にホーリィ・ドールは命ある限り、従う・・・・・・
どんなに捨てられようとも、傷つけられようとも。
目の前のヒトが首輪を持っている限り、ずっとずっと彼が主人だ。
逆らえない。私はホーリィ・ドール。
そういう生き方しか知らない、奴隷人形・・・・・・・・・
彼の言葉に反論出来ず、は悔しそうに唇を噛んだ。
その様子にサレの笑みが深くなる。
もっとよく見せろとばかりに、身体を引き寄せられた。
「サレ、あまりに手荒な事はしないで」
アガーテがサレを嗜める。
一方のサレは「わかってますよ」とだけ答え、を掴む手に力を込めた。
「ヴェイグ・・・」
兵達に連行されていくヴェイグ達を見送る事しか出来ない自分を、は呪った。
やがてヴェイグ達の姿が見えなくなると、アガーテがサレ達の元へ歩いてきた。
そっとサレに捕まるの頬にアガーテは手を重ねた。
愛しげに、その指が頬を撫でる。
「アガーテ様・・・」
「もう少しで・・・私の願いが叶うの。、貴女の力が必要なの・・・力を貸して・・・」
アガーテの懇願に困ったは、逃げるようにサレの顔を見た。
数センチしかない身長差なのに彼にとても高い所から冷たく見下ろされている気がして、は鳥肌が立った・・・。
文字打ち面倒だったぜの巻。おいおいおいおい・・・。
アガーテ様話長いんだもん。
飛ばしたい所だったけど後々に重要(になるはずの)部分だからそうもいかず・・・。
今回の夢主のお相手としてはサレ様。サレ様やりたい放題でした・・・。
あーおもしろい。
・・・にしてもこの時のヴェイグってホント、クレアに近づけていて遠くにいるから
焦りまくってクレア連発してるよね。夢主は密かにカウンター持ってると思うよ。
そんで回数上がりまくるごとに無言無表情でイラつくかと・・・(´▽`*)ツンデレさん?
そんなヴェイグは『サレカウンター(夢主用)』でも持ってんじゃないですかね?