を連れて、リフトに乗り港側へと降りる。
停泊した船の元へ駆け出せば、ティトレイの姉、セレーナと他の娘達が
ワルトゥとミリッツァに連れられて今まさに船に乗り込もうとしている最中だった。
「姉貴ーっ!!」
「ティトレイ!?」
ティトレイとセレーナが互いを確認したと同時に、兵士が二人の間に遮るようにして入った。
「何処から来やがった!?リフトは閉鎖中のはずだぞ!!」
「その人達は返してもらうよ!」
マオがトンファーを構え、ワルトゥ達を睨みつける。
「・・・レディ達の前で騒ぎは困りますな」
落ちつき払うワルトゥは、ユージーンの方を静かに見た。
「手を尽くしたつもりでしたが・・・隊長がこれ程早くこの街にお見えになるとは計算外でした」
「のおかげだ」
ユージーンに言われ、ワルトゥは信じられないとでも言うように目を細めた。
しかし、ヴェイグの後ろにいる話題の人物を確認して、それに納得をする。
「貴女も裏切るというのですね・・・・・・しかし、私は私の仕事を完遂させていただきますよ」
「俺は争いを望んでいるわけではない。手を引け!ワルトゥ!!」
説得を試みるが、ワルトゥは退かない。
「我らの任務は彼女達を女王陛下の元へ送り届ける事!任務の放棄は王国への反逆を意味します。・・・・・・私が王国を裏切るとお思いですか?」
「こんな事をして何になるワルトゥ!これが国の為になるというのか!?」
「私もこんなやり方など望んではいません!!」
きっとワルトゥも自分と似たような心情なのだろうと思い、は彼の気持ちがよくわかった。
「しかし事は急を要するとの御命を承った以上、些細なことに気を配っている余裕はないのです」
「だったら、こっちも力尽くで奪い返すまでだ!!」
ティトレイはそう言って、セレーナの前に壁となる兵を殴り飛ばした。
「姉貴!大丈夫か!?さぁ、こっちに来るんだ!!」
ティトレイがセレーナに手を差し出すが、セレーナはその手を取らない。・・・いや、取れない。
まるで金縛りにあったように身体がまったく動かないのだ。
「か・・・身体が動かない・・・!」
「っ!?貴様ら!姉貴に何しやがった!!」
「お願いをしただけですよ。しばらく動かないでほしい・・・と」
驚くティトレイに、ワルトゥは続ける。
「急を要するとの命を受けたとはいえ、手荒なマネは出来る限り避けたいのです」
ですから、皆さんもお引き取り願えますかと丁寧に訊ねるワルトゥに、ヒルダはタロットを一枚取って投げた。
それは、間に入ったミリッツァに握っていたナイフで弾き飛ばされてしまった。
「それとも我らを倒して彼女達を助けますか?もっともここで戦えば彼女達は無事では済みますまい。・・・動けないのですからね」
「この卑怯者っ!!」
ティトレイは怒り、怒鳴った。
「戦いなさい、ティトレイ!」
両者の睨み合いを破ったのはセレーナだった。
「こんな奴らの言いなりになってはダメよ!貴方が命を懸けるなら、私も命を懸けるわ!!」
セレーナに続いて、他の娘達も叫ぶように言った。
「私も覚悟は出来ています!!」
「戦ってください!お願いします!!」
未だ躊躇うティトレイをヴェイグが説得する。
「このままだと、どのみち彼女達を助ける事は出来ない。やるぞティトレイ!!」
ヴェイグに言われてティトレイは決意したようで、拳を胸の前に作り、構えた。
「・・・穏便に話をつけたかったですがそうもいかないようですね・・・いいでしょう」
ワルトゥが杖を構えた。
「ただ、本当に彼女達を傷つけてしまっては私の立つ瀬がありません。・・・ミリッツァ」
「わかっている」
ミリッツァが両手を広げる。周囲にまばゆい光が放たれた。
あまりの眩しさに思わず目を瞑る。
次に目を開けると、先程の風景はない。
何枚もの鏡に囲まれて光が反射しているような不思議な空間。
まるで万華鏡の中にでも入ったかのような場所だ。
「ミリッツァのフォルスで作り出したこの光の空間でどんな戦いをしようと、外部には何の影響もありません。
これで心置きなく戦えますな、隊長。・・・・・・参りますぞ!」
「行くぞ!!」
ヴェイグの掛け声を合図に、全員が戦闘を開始した。
せっかくドクター・バースの娘が巻いてくれた包帯だが、血を出さなくてはいけないフォルスなのでやむを得ない。
は腕の包帯を取り払って、塞がった傷に向かって刃を立てた。紅い鮮血が滴る。
「我が呪いの血を雨と降らせん・・・・・・アシッドレイン!」
まずがワルトゥ達の動きを鈍くさせる。
そこへヒルダが導術を仕掛けるが、直撃するよりも先にミリッツァが分身して事で、全てはずれた。
「お願いします・・・・・・パワークラフト!」
「よっしゃ 行くぜ!!」
アニーの陣術で力を強くしたティトレイはワルトゥに走り寄る。
「マオ、導術で分身を消すんだ!」
「わかったよ、ユージーン!!」
導術を詠唱しようとマオが立ち止まる。
そこを、背後からミリッツァの分身が襲ってきた。
マオがその分身の存在に気づいた時には遅く、ナイフがマオに向かい投げられた。
しかし、マオに当たる事はなかった。
がマオと分身の間に入り、剣でナイフを弾き飛ばしたからだ。
「!」
「もっと周りをよく見ろ!それでも元・王の盾の兵か!?」
「うん、ごめんね、ありがとう!!」
に礼を言ってから、再び詠唱をする。
「疾風の爪にて引き裂かん!ガスティーネイル!!」
マオの詠唱が完成し、疾風の爪がミリッツァの分身を一気にまとめて引き裂いた。
分身は掻き消されて、ミリッツァ本体だけを残す。
「今ダヨ!皆!!」
ヴェイグとユージーン、ティトレイが本体へ向かう。
「絶翔斬!!」
「瞬迅槍!!」
「疾空波!!」
三人の同時攻撃を受けて、悲鳴を上げながらミリッツァが倒される。
「ミリッツァっ!」
ミリッツァがやられた事に気づいたワルトゥが一瞬、そちらに気を取られる。
すぐにヒルダとが詠唱しているのに気づき、離れて間合いを開こうとする。
だが、先程が放ったのアシッドレインのせいで動きが鈍って思うように動けなかった。
「氷結よ 我が命に応え敵を薙ぎ払え」
「冷たき氷牙よ 切り刻め」
詠唱の言葉が違うものの、仕掛ける導術は同じと互いにわかったらしい。
声をそろえて二人は導術の名を叫ぶ。
「「フリーズランサー!!」」
互いの詠唱が完成し、無数の氷の結晶が現れた。
一方は冷たく美しい青色の氷、もう一方は不気味かつ美しい紅色の氷。
結晶はワルトゥ目掛けて飛び散った。
そして、敵を貫く。
ワルトゥとミリッツァが倒れると、光の空間にヒビが入る。
やがて、ガラスが割れるように崩壊した。
VSワルトゥ&ミリッツァの巻。
ワルトゥに「眉を寄せた」って表現が使えなかったので急遽色んなトコ書き換え。
(ワルトゥ、眉なしダンディだったよ・・・)
今回のポイントは
前回マオのことを傷つけた張本人である夢主がマオを助けたことかな・・・。
一応仲間意識が芽生えてきたと言うか・・・ね。
見直して、今回夢主は目立っていないことに気づく。
・・・トドメは刺したんだけどね・・・。
次回、堅物ミル様参る。