バビログラードに朝日が昇った。
裏手に存在する巨大な滝に、朝日の光が反射してキラキラ美しく光っている。




朝になったという事で、昨日サレが言っていたように港から何回かに分けて娘達をバルカへ送る事になった。
最初にワルトゥ、ミリッツァ班の娘を船に乗せて、それからも順序よく事を進めていく。



娘達の半分以上が送り出されてから、サレは思い出したかのように言葉を放つ。



「もしかすると、アイツらもうココまで来てるかもね」

船に乗り込んでから、サレはもう一度述べる。


「そうだねぇ・・・・・・登山洞に足止めを作ろうか。じゃあ君と・・・・・・」


サレは傍らに居たガジュマの男を指名し、続けてを見た。




、君にするよ」


何となく、指名されるだろうと思っていたは驚くことなく、ただ頷いた。


「イイ子だね、。・・・・・・行っておいで」
「はい、サレ様」


は乗っていた船から飛び降りると、街の出口へ向かう。
ガジュマの男、ドネルも後を追おうとすると、サレに声をかけられた。




「もし、が負けたら言ってほしいことがあるんだ」






サレから、伝言をされるドネル。
ドネルは内容をしっかりと聞いて記憶し、頷いた。


「でも勝ったら言わないようにね。僕、お楽しみはとっておくタイプなんだ」

サレは微笑みながら、心の中で呟く。










―――君の潰れる『心』が見られなくて残念だよ、・・・。
















ドネルがの後を追っていく姿を見送る。









汽笛が鳴った。



































ある程度の所まで登山洞を下っていたとドネルはこの辺で良いだろうと足を止める。


今回は邪魔者の足止めをするという重要な任務だ。
ドネルはその任務に当たれた事を誇りに思い、張り切っていた。


「奴らをドぶっ殺すのはこのドネル様だ!お前はその辺でド大人しくしてなっ!!」

どうやらに獲物を取られたくないらしい。
態度を大きくしてに言い放つが、彼女の肩に乗るおなじみのハープがそれに反応して怒る。

「キキィーッ!」と奇声を上げてドネルに飛びかかった。


「ドッギャアァァァッ!!ドいきなり何するんだ!!」
「ハープ、いいよ」

二,三回ドネルに噛み付いたハープは満足そうにの肩に戻っていく。
にはドネルの時とは態度を変えて、甘えた声で首元に擦りついてきた。

「まったく・・・ド恐ろしいペットだな・・・」
「ペットじゃない、友達だ」



軽くドネルを睨みつけてから、は唇を噛んで血を出した。
その血に息を吹きかけ紅い霧を作り出してから、ドネルを見た。






「これで戦いやすいだろう?・・・お前が負けるまで、私は何もしないよ」


言うと、は傍らの岩に腰掛けた。

































長い階段を上っている最中に、ティトレイが大きくため息をついた。

「結構歩いたな。あ〜、街はまだかよぉ・・・」
「歩いた距離から考えると、街は近いと思いますよ」

彼の呟きにアニーが答えると、ティトレイは嬉しそうに笑った。


「そっか。無事に登山洞を抜けられそうだな」

「・・・マオ、お前が感じたのは連中のフォルスだけだったのか?」

ヴェイグは、登山道に入る前にマオの感知したフォルス反応が、
つい先程出会った『漆黒トリオ』のモノだけだったのか気になってマオに訊ねた。

マオは「うぅ〜ん」と唸りながら、答える。


「・・・そうかも。敵の待ち伏せってのは考えすぎだったかもね」
「・・・そうか」


ヴェイグはホッと息をついた。

銀髪の少女と刃を交えなくて済むと安心したのだ。



「お!外に出られるぜ!出口かな?」

ティトレイは先程の疲れを完全に忘れて、喜んで残りの階段を駆け上がった。
それを見て、まるで子供だと呆れてため息をついたのはユージーンと、先日仲間になったヒルダだ。

ティトレイの後を追って走ったマオが、ティトレイに続いて外に出ると、大声で叫んだ。


「うわぁ!何コレ!?一面中霧なんですケド!!」
「・・・紅い霧・・・?」
「気をつけろ、敵かもしれん」



ユージーンの言葉で皆が一斉に周囲に気を配り警戒する。
ふと、霧の奥から二つの影が現れた。真っ直ぐにこちらに向かってくる。

紅い霧を割って突き進んで来ながら、ヴェイグ達がその姿を確認出来る位置まで来て、止まった。



霧の向こうから現れたのは、サレと、トーマだった。





「サレ、トーマ!」

驚くヴェイグとティトレイに対し、サレとトーマは無反応だ。



「この野郎・・・姉貴とクレアさんを返せ!!」

ティトレイはサレに叫ぶが、サレ達は眉一つ動かさず、反応さえしない。


「・・・?・・・何だか、様子が変だよ!」

マオがそう言った瞬間、ヴェイグ達の頭上の岩壁が崩れた。
ヒルダがそれに気づいたおかげで、皆が何とかそれを避ける。

あのまま反応のないサレ達に気を取られていたら、間違いなく大岩に頭を潰されていただろう。



そう皆が思っていると、誰かの笑う声が崩れた岩壁の方から聞こえた。
その声はだんだんとヴェイグ達のすぐ近くにまで聞こえてくるまでになっていく。
ヴェイグ達がそれに気がついたと同時に、足元の土中から声の主ドネルが姿を現した。


「ド馬鹿共が!土人形相手に何をしゃべってやがるっ!」

ドネルが高らかに叫ぶ。
しかし、ヴェイグはドネルの背後にいるを見つけ、そちらに反応した。

!何故こんな所に・・・!!」
「あ!ホントだ、だ!!」
「アンタ、サニイタウンで見た・・・」

ヴェイグがを見つけると、ドネルそっちのけで次々にマオやヒルダも意識が反れる。


「オレをド無視するとは良いド胸だな!」
「あ、君の名前 何?」


無視されて腹を立て抗議するドネル。
怒鳴り散らすと、ようやくマオに名乗るチャンスを与えられた。



「オレは王の盾のドネル!サレ様の命令により、お前らをドぶっ殺す!!土のフォルスのお味はどうだ?ド美味いだろうっ!!
 王の盾に刃向かうド馬鹿共が!お前らの攻撃なんてド無駄なんだよっ!!」

「うるさい」

ヴェイグは長くしゃべるドネルの周りを氷柱で囲む事で黙らせた。


不意打ちに驚くドネル。


「ドうぉぉっ!?ドいきなり地面が凍った!!」
「お前に用はない。と喋らせろ」


ヴェイグの一言に、完全にキレたドネルは武器を取り出して、己を囲む氷柱を叩き壊した。


「完っ全にドタマきたぁぁぁっ!勝負だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ドネルが叫ぶと、泥人形のサレとトーマが動き出した。




はハープを撫でながら、その戦闘を傍観していた。


ドネルと一緒vの巻。
ドネルってなんて可愛いキャラなんだ。ドネル良いよドネル。
皆に無視されるドネル可愛いよ・・・。

今回、サレと夢主が初めて(ってわけでもないけど)別行動をとりました。
そんでもって進展あり。

ちなみに、「夢主が壊れるところをサレは見たかったはずでしょ?何で離れるの?」
と疑問に思った方いらっしゃると思いますが、コレちゃんと訳があるんですのよ
それはやっぱり話の後々に出てくるんで、まぁ今は特に気にせず次回をお待ちください。