バビログラードは山の頂上にある街だ。
ペトナジャンカの煙やスールズの山のような空を遮るものが何も無いので星がよく見える。
はハープと一緒に空の星を一つ一つ数えて眺めていた。


娘達を聖殿に収容して、サレ、ワルトゥ、の三人でバビログラード登山洞出口の前でトーマを待っているところだ。


サレはふと思い出したように言った。


「トーマはまだしも・・・ミリッツァをまだ見てないなぁ。、見た?」

はミリッツァがどんな人物だったかを思い出してから、否定して首を振った。
そう言えばココに来てまだ一度も会っていない。


「ミリッツァは城から逃げ出した娘を追いかけていたが・・・」

ワルトゥが説明していると、登山洞の出口からトーマがやってきた。
現れたのはトーマ一人だけで、サニイタウンで見た美女、ヒルダの姿は見えない。


「トーマ、足止め失敗したんだね」

サレは良いザマだと言うかのように口元に笑みを浮かべてに呟く。


「・・・あの女の方は・・・どうしたんでしょうか」
「さぁ?トーマのヘマで死んだか、ドクター・バースの娘さんみたいにヴェイグ達の所にいるかもね」


サレとが話していると、ワルトゥの目の前にふわりと光が現れた。
その光の中から、傷だらけのミリッツァがよろけながら出てきた。


「ミリッツァ、どうしたんだ?その傷・・・・・・」
「ヒルダの連れに・・・やられた」

苦しげに呟くミリッツァに治癒術をかけようとは近づくも、「触るな」と一言冷たく返されて手を払いのけられてしまった。


「ヒルダの連れ・・・か」

サレ達の元へやってきたトーマが呟くと、ワルトゥが続けて言った。


「隊長達の事か?ミリッツァ」

ワルトゥに問われて、ミリッツァは小さく肯いた。
つまり、ヒルダはユージーン達の仲間になったという事だ。


そして、自分達との距離もそれほど遠くは無い、という事。





「もう大分近くまで来てるんだねぇ、アイツら」

サレは他人事のように「早いもんだねぇ」と呟いてから、続けて言った。

「なら確実性を求めて何回かに分けて娘達をバルカへお届けすればイイかな」
「そうなると、明日から・・・になりますか?」

の問いにサレは「そうだね」と頷いた。
























サレとが聖殿に入ると、集められた娘達が一斉にこちらを向いた。

緊張した重い空気が聖殿内に広がる。


「さて、今日はここでお休みだよ。もうわかってると思うケド、外には見張りもいるし僕もいる。
 ・・・ココには、このを置いておくしね」

サレはを一目見る。


「変な考えを起こさない方が身の為だよ。中には力加減を知らない奴もいるからねぇ」

サレの言葉を聞いて、の頭の中にトーマが浮かんできたが、記憶には残すまいと考えた。




サレの脅しに娘達が怯えた。それを見て実に愉しそうにサレが微笑む。




「ふふふ・・・大丈夫。大人しくしていれば君達の安全は保障するよ。
 君達は大切な『モノ』だしね。決して悪いようにはしない」



娘達を一瞥して、サレは続けた。


「だから泣いたり嘆いたりしないで。・・・悲しみは美しさに影を落としてしまうから」


・・・まぁその悲しみで美しさを増してる子が一人いるんだけど。とサレは心の中で呟く。




「それじゃあまたね。・・・、任せたよ」
「はい、サレ様」


サレは髪を掻き揚げると、聖殿を出て行った。










は冷たい扉に背中を預けて座る。
双剣を抱えて、血のような紅い瞳で娘達を見張った。


娘達の反応は様々で、に怯える者、の美しさに見惚れる者、を観察する者などがいた。




「クレア・・・私、怖いの。私達どうされちゃうのかしら・・・」
「大丈夫よ、ファム。きっと私の幼なじみのヴェイグが助けに来てくれるわ。・・・だから涙を拭いて?きっと助かるわ。だから信じて」

・・・その中で、クレアは怯える娘一人一人に優しく言葉をかけ、手を握る。




「・・・よく飽きないなと思うよ、ハープ」

肩にいるハープを撫でて言うと、ハープも同意したのかキィと鳴いた。



しばらくクレアを観察していると、先日足が痛いと言っていた娘達がクレアに近づいた。


「クレア、あの時はありがとう・・・。私、あれからすごく楽なの」
「良かった。でも私はさんに言っただけ。休ませてくれたのはさんなの」
、さんって・・・あそこの扉にいる?」

娘はチラリと扉にいる銀髪の少女を見た。
肩の動物を優しく撫でているが、表情が何も変わらないのでどこか不気味だ。


「そうよ。とっても優しくてね、何だかすごく落ちつくの」

クレアは娘に笑って言ったが、娘は躊躇うように「でも・・・」と呟く。


「でも・・・私はあのヒト、苦手。すごく綺麗だけど何考えてるかちっともわからないもの」
「あんまり感情を表に出さないけど、それでもとても優しいのよ。
 私の傷の手当てをしてくれたし、私の幼なじみのヴェイグも助けてくれたの!」

戸惑う娘に、クレアは「それとね」と付け加えた。



さんの肩にいるマフマフって生き物は優しい人にしか懐かないの」


クレアが思わずはしゃいで言っていると、はクレアの方を見た。


「クレア。口だけでモノを言うと、後で痛い目を見るぞ」
「嘘は言ってないですよ、私」


ニコリとクレアから悪意のない笑顔が浮かべられる。
は大きくため息をついてそっぽを向いたが、柔らかくフッと笑った。




それは一瞬の笑みだったが、娘達はその美しい微笑に魅了された。


四星集合!の巻。
クレアと夢主のコンビたまらん・・・!書いてて楽しいです。
なんかこの2人クレアと女ヴェイグみたいだよねぇ・・・。可愛い。
そしてサレのセリフは書いてて笑えてくる。楽しい・・・!

次回からこの話の大分重要部分になってきます。
ドドドのドネルも登場さ♪