トーマ、ヒルダと別れてサニイタウンを出る。
テルアラ街道を通り、クロダダク砂漠の入口まで歩いた。
砂漠越えは容易ではない。旅もした事のないような娘達に砂漠越えなど出来るのであろうか。
そんな不安を抱きつつ入口にさしかかると、珍しく自分で歩いていたハープが一気にの肩を目指して駆け上がってきた。
「ハープ?」
肩に辿り着いたハープは何かを教えるようにに向かってキィキィと鳴く。
「・・・・・・・・・風の匂い・・・」
先程まで穏やかな風だったのに、今は何故か嫌な風の匂いがする。
ゴゥゴゥと激しい音も、微かに聞こえてきた。
ハープに促されて、周囲を確認する。すぐに、原因を見つけた。
まだ少し距離はあるが、前方に大きな竜巻が進路を阻んでいる。
・・・アレが風の匂いの原因だ。
「・・・サレ様、砂嵐が吹いています」
「・・・・・・あぁ。あの竜巻か。あんなのは僕のフォルスであっという間だよ」
言ってサレは右手を横に振るう。
いとも簡単にフォルスで前方の竜巻に負けないくらいの大きさの竜巻を作り上げて、それを前方の竜巻にぶつけた。
二つの竜巻は相殺して消えた。
何事も無かったかのようにサレはを見る。
「さ、通ろうか」
「急ぎましょう。風の匂いが消えません。すぐに元通りになります」
「じゃあ急ごう」
サレは後ろの兵達に振り返った。
「急ぐよ。お人形さんに傷がつかないように充分注意するんだ。イイね」
「はっ!了解致しました!!」
兵達はサレに敬礼すると、娘達を囲んで歩き出した。
連れてきた娘のうちの一人がクレアに足の痛みを訴えたのは、砂漠を越え切ってシーラグ橋を渡っている時だった。
「私が休ませてもらえるように頼んでくるわ」
快くクレアがそう言うと、娘は逆に顔を青くして首を振る。
猟奇的な性格をした青年か人形のように無表情の少女に頼むというのだろうか。
あんな不気味なヒト達に休憩を請うだなんて・・・と、娘はクレアの身を案じた。
「いっいいわ!そんな!クレア、いいのよ!少し痛いだけだから!」
「大丈夫。任せて」
「でも・・・」
まだ遠慮する娘の手をクレアは優しく握った。
「信じて。絶対大丈夫だから。ね?」
その言葉を聞くと娘は少しは安心したようで、軽く頷いた。
「クレア、私も一緒に行きましょうか?」
傍にいたセレーナが訊ねる。
クレアは頷いた。
「お願いします。セレーナさんがいれば安心します」
クレアは微笑むと、セレーナと一緒に隊列の前へ歩いて行った。
「さん」
娘達の前を歩いていたは、女の声に気づきそちらへ振り返る。
いたのはクレアとペトナジャンカのセレーナ。
クレアは微笑んでいるが、セレーナは表情を作り上げないに少し怯んで引いているようだった。
「さん、足を痛がってる子がいるんです。少し休ませてもらえませんか?」
「・・・わかった。サレ様に伝えて来よう」
「ありがとうございます」
クレアは礼を言うが、は小さく「いや・・・」とその礼を否定した。
「こんなに長距離を歩いているんだ。痛くもなるさ。旅に慣れていないのだろ?何かあったら話せばいい」
は表情を変えずに言ったが、クレアは笑顔になってまた礼を述べた。
サレに娘を休ませるように頼むと、案外簡単に休ませてもらえた。
兵士達も休み無しの砂漠越えで疲労していたのだろう。
娘達が逃げ出さぬようにと警戒しつつ、与えられた休憩時間に喜んだ。
クレアは木陰の所まで歩いて行き、腰を下ろした。
ふぅと息をつく彼女の傍に近寄り、は黙って水を差し出す。
一瞬驚いた顔をしたが、クレアはすぐにそれを受け取った。
「ありがとうございます」
クレアが礼を言えばまたは小さく否定した。
「・・・お前が一番疲れているんだろ。どうして無理をする?」
「私の励ましで皆が元気になるから・・・私も頑張ろうって思うから・・・」
「・・・・・・そんなのはただの自己満足だ。自分の体調も管理出来ない奴が人の心配をするな」
はそれだけ言うと、さっさとサレの元へと帰ってしまった。
「・・・不思議なヒト」
クレアは呟いた。
何であのヒトはあんなにヒトの思っている事がわかるのだろう?
それから二日、三日かけてようやくバビログラードに辿り着いた。
バビログラードは『蒼獣信仰』という宗教に信仰熱い街で、
その奥には蒼獣を祀る巨大な聖殿が存在している。
「・・・さて、ワルトゥやミリッツァが先に来てるハズなんだケド」
サレと同じ四星のワルトゥとミリッツァ。
サレやトーマ達ウエスタリア大陸方面から娘を集めていたのとは対照的に、
彼らはイースタリア大陸方面から娘を集めていた。
その他、サレやトーマが立ち入らなかった街も彼らの管轄でココ、バビログラードにて集合する事になっていた。
さて、その二人が辺りを見回してみても見当たらない。
街はとても静かだった。街の者さえも道を歩いていない。
少し街の中を散策すると、聖殿の方からワルトゥがやってきた。
「よく来ましたね、サレ。トーマはどうしたのですか?」
「ユージーン隊長の足止めですよ。そちらは美しいお人形さんを見つけたんですか?」
「娘達は聖殿へ連れて行きました。サレもそうすると良い」
「・・・わかりました」
サレが頷いた後、
ワルトゥはを見て、軽く礼をした。―――相変わらずの紳士ぶりだ。
「長旅でお疲れでしょう?今夜はゆっくりと休まれてはいかがかな?」
「には聖殿のお人形さんの見張りをしてもらおうかと思ってるんですよ」
サレはの方を見て言った。
「サレ、彼女を休ませてあげてはどうだ」
ワルトゥが知る限りでも、彼は随分とを扱き使っていた。
自分達や兵士が居るこういう時くらい、彼女を休ませてやっても良いだろう。
「中にも見張りが居た方が安心でしょう?お人形さん達を中で見張る事が出来るのはだけですよ」
「しかし・・・」
「それに、」
サレの言葉は続く。
「は僕のお人形さんですよ?どうしようと僕の勝手でしょ?」
「サレ・・・!」
何という非人道的な発言。
笑うサレに怒ったワルトゥが声を荒げたが、それを止めたのは本人だ。
「構いません。サレ様の命令でしたら、私は喜んでやります」
「ホラね」
サレはの返事に「イイ子だね」と頭を撫でる。
当然、彼女の肩に乗るハープがサレに威嚇した。
バビログラード到着の巻。
あんまり思い入れが無かったり。
ただクレアの性格とか密かな夢主の優しさとか出ていれば良いなってカンジ。
次回はサレのあの名言ですよ。ゲームプレイ中に私そこで大笑いしましたぜ。
最高だよサレ様。